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6年社会「自由民権運動」実践編(後)

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きゅうすは、だれからだれに投げられたのだろう。
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子供たちがグループで話し合った意見はおおむね

きゅうすは聴衆から警察官に投げられた。

弁士が言いたいことは、国会を開いて、憲法を定めろということ。

警察官は、弁士の言論を押さえつけようとしている。

というものだった。

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今日の課題に対する一応の答えは出た。

さて、この「理解」をより確かなものにするために、私はどうしたか。

 

『課題ボーダー』である私は、授業の目的を達成するためには手段は選ばない。

 

NHK『歴史にドキリ!』を見せた。

板垣退助大隈重信〜明治の国づくり(議会政治)〜

 

そして最後に、学習のまとめを黒板に書く。

弁士の絵から「歴史にドキリ!」までの一連を短くまとめてで囲む。

 

今日の課題に対応するだけなら

きゅうすは、聴衆から警察官に投げられた。

で済むが、それでは今回の課題を発問型にしたメリットを生かしたとは言えない。

発問型はわざわざ答えを見えなくし、子供たちに分かった時のインパクトを与えることができる。

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きゅうすは、聴衆から警察官に投げられた。

       ↓    ↓

      国民  新政府

        怒り

   『国民も政治に参加させろ!』

     自由民権運動が起こった

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これは単に聴衆から警察官にきゅうすが投げられたという事象ではなく、国民の怒りが新政府に向けられたという大きな流れの一端なのである。

「きゅうす」は国民みんなの「怒り」なのだと説明する。

時間があれば

『国民も政治に参加させろ!』の『   』内を抜き、国民の怒りの言葉を書かせたいところである。そうすればここで確実な評価ができた。

 

『きゅうすは、だれからだれに投げられたのだろう』他、全500以上の課題を掲載!↓↓↓

 

6年社会科「自由民権運動」実践編(前)

拙著学習課題の見える化で学力アップ! 驚異の板書ツール「課題ボード」入門 では、学習課題の一つの分類として、「知識・理解型」「思考・判断型」「表現型」「技能型」を挙げ、それぞれに典型となる表現を例示した。

知理「〜を知ろう。」
思判「〜について考えよう。」
表現「〜にまとめよう。」
技能「〜ができるようになろう。」
などである。
これらの学習課題は教師が分かりやすくゴールを示し、教師と子供たちが目標を共有するものだが、これらとは別に子供たちにはゴールを見せない「発問型」がある。
 
 
例えば自由民権運動のこの絵を提示して、どのような学習課題を設定するか。

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今回、この授業を実践する機会があったので拙著学習課題の見える化で学力アップ! 驚異の板書ツール「課題ボード」入門 でも紹介したこの課題を試してみた。

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きゅうすは、だれからだれに投げられたのだろう。

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絵の中にいる人の名称を教える。手前から
弁士、警察官、聴衆
まずは、一人で考える。
教科書や資料集を見ながら、または予想しながら、自分なりの考えを書く。
 
子供たちにはノートに次のように書くように言った。
きゅうすは    から、    に投げられた。
弁士は   (訴えている内容)    
警察官は   (何をしようとしているか)    
 
子供たちのノートを見ると多くの子が
きゅうすは、聴衆から警察官に投げられた。
と書いている。中には
きゅうすは、聴衆から弁士に投げられた。とか
きゅうすは、弁士から聴衆に投げられた。とかあって吹き出してしまう。
早く書けた子は、弁士と警察官の行動について考える。
 
そして、グループになって、画用紙に意見をまとめる。
 
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どのグループからも意見が出た。(続く)

6年国語「やまなし」「イーハトーヴの夢」実践編6

「やまなし」の「本の紹介カード」を書く時間が全く取れていなかったので、不本意ではあるが1時間追加してカードを書いた。

 
今日の課題
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「やまなし」の本の紹介カードを書こう。
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書く内容はすでにノートに書いてあるので、基本的に写すだけなのであるが、文書が多い場合は削らなければならない。
それから「作者の紹介」などは、できるだけ今の自分の考えで書くように言った。
 
1時間追加してよかったことがある。
 
それは机間指導で、一人一人、全員をほめることができたことである。
 
実際、子供たちはよくこの短時間で「やまなし」の主題や表現のすばらしさに迫れたと思う。
 
紹介カードに書かれた内容も一人一人が違っていて、それぞれのゴールがこの学習にあったことが分かる。
 
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子供たちはこの時間もよく考え、絵もていねいに描き、完成したのは約3分の1の10人であった。
 
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 この日の宿題は3連休で「なめとこ山の熊」「注文の多い料理店」「けんじゅう公園林」「よだかの星」を読んで(すでに印刷して渡してある)、簡単なあらすじと、一言感想を書いてくること。
 
 「単元を貫く言語活動」の次へのステップへと進む。

 

 

6年国語「やまなし」「イーハトーヴの夢」実践編5

この時間は、研究授業である。
 
「やまなし」5時間目。最後の授業となる。その後は3時間で宮沢賢治の他の童話の「紹介カード」を書く学習に移る。
 
残念ながらここまでで0.5時間×2の延長があり、全8時間で「やまなし」「イーハトーヴの夢」を教え切るという目標は達成できなかった。
 
今日の課題
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自分にとっての「最も魅力的な場面」を決めて、引用文と解説をカードに書こう。
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〈解説〉に書く内容が難しいと思われたので説明した。
 
・どんな様子が表されているか。
・どんな言葉が効果的に使われているか。
・何かを象徴している色はないか。
・賢治が伝えたかったことは何か。
・「かわせみ」「やまなし」が表していることは何か。
・「五月」「十二月」を通して宮沢賢治が伝えたかったことは何か。
・物語全体を通して宮沢賢治が伝えたかったことは何か。
 
また、これらのことを具体的に表現するとどうなるかを例文で示した。
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この時間、まずノートに引用と解説を書いたのであるが、ノートに書くだけで1時間終わってしまった。
書かれた内容は次回カードになったものを紹介するが、「やまなし」5時間目とは思えないような〈解説〉ができた。
 
一つ反省だった点は課題の「最も魅力的な場面」という言葉である。
 
「最も魅力的」というのは、主観的な視点である。
 
しかし〈解説〉は客観的な視点である。
 
そのずれが一部の子には障壁となっていた。
 
特に、青線で引いた「美しい表現」を選んだ子は苦しそうだった。
 
それでも何とか書いていたのでそれは立派だった。
 
「最も魅力的」ではなくて、何と聞けばよかったか。
 
それはまだ思いつかないが、「作者の意図が感じられる」「作者の工夫が感じられる」ような客観的視点の選択がよかったのではないかと思っている。
 

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6年国語「やまなし」「イーハトーヴの夢」実践編4②

4時間目の最後に子供たちがノートに書いた「十二月」を通して賢治が伝えたかったこと。

 
「生き物や食べ物、どんなものにも命のつながりがあり、続いていることを伝えたかったのだと思う。
「賢治は命のつながりを伝えたかった。」
「やまなしは自分から食べられようとする。自分だけで命のつながりをして、自分のために命のつながりをしている。」
「やまなしは食べられてもまた新しい命が生まれて、また食べられて命が生まれるのくりかえしだ。」
「生き物は、他の生き物の命を殺さないと生きていけないけど、命をうばうことでまたつながりがあるということ。」
「かにの親子のあたたかさから生まれる愛情や、勇気。いつも三人なかよくくっついていて、どこへ行く時も三人いっしょだから。」
「生き物だけでなく植物の命もつながっている。かわせみが魚を食べるざんこくさとは違い、植物は食べられても次につながるからいいと賢治はいいたかった。」
 
特に選んだわけではなく、積んであるノートの上から順に書いた。
 
下から2番目の子以外は「命」にかかわらせて「十二月」を書いていた。また多くの子が「五月」との対比で考えていた。下から2番目の子にしても、ここまで到達できれば悪くはない。
 

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6年国語「やまなし」「イーハトーヴの夢」実践編4

今日の課題

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「十二月」の場面を通して、賢治が伝えたかったことを考えよう。
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「十二月」を一読後
 
前時の振り返りをする。
 
『「五月」の学習では「かわせみ」を通して、命、死、弱肉強食、つながりなどが表現されていることに気づきました。表面的な物語の流れとは別の裏側の意味があることが分かったと思います。』
 
『それでは、今日は「十二月」の中で表現されていることを考えてください。』
 
「いきなり!?」
 
『はい。ノーヒントでどうぞ。』
 
5分経過し3人がノートに書いた。
 
指名し発表してもらう。
「家族のあたたかさ」
「家族の大切さ」
「五月はかわせみが来て弱肉強食といういやなことがあったけど、十二月はそんないやなことばかりではないということ」
 
板書しながら、3つ目の意見を取り上げる。
 
『そうだよね。かわせみは弱肉強食を意味していたけど、やまなしはそんないやなことじゃなくて何を意味しているんだろうね?』
 
かわせみ→弱肉強食
やまなし→????
 
「おいしさ」「楽しさ」という意見が出た。
 
『そう!そんな感じで考えてみよう。かわせみの弱肉強食とはぜんぜん違う意味が見えてくるよね。』
 
さらに考えるきっかけを与える。
 
『やまなしは落ちたらどうなる?』
「食べられる」
「酒になる」
『そう、かにへの恵みになるよね。それで終わり?その後は?』
「うんこになる。」
『そう、うんこになって川の栄養にもなる!他に何か残らない?』
「種」
『種はどうなるの?』
「流れていく」
『そしてどこかに流れ着いて・・・』
「芽がでる」
「木になる」
『それから?』
「また『やまなし』ができる」
 
板書で「やまなし」からスタートしたが「やまなし」に戻った。
 
『ここに表現されていることはどんなことかな?』
 
 子供たちは、だまってノートに考えを書き始めた。
 
おそらく、初めて「やまなし」を読んだ時には思ってもいなかった到達点に子供たち自身も驚いていることだろう。
 
残念ながら、手元に子供たちのノートがなく、どんな言葉があったかここで示すことができない。それは次回に。
 
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6年国語「やまなし」「イーハトーヴの夢」実践編3.5

「五月」が45分で終わらなかったので、延長を20分認めていただきたい。

 
まず前の時間に子どもたちがグループで書いたかにの子供たちがこわがっている理由を掲示した。
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「かわせみのスピードに驚いた」
「こわいところに自分も連れて行かれると思った」
「食べられた魚のように自分も食べられると思った」
「弱肉強食の弱い方に自分もいると分かった」
 
どれもすばらしい回答である。
 
実は私の目論見としては「死ぬことに対する恐怖」という言葉が出てきて、「かわせみ=死」と強引にまとめたかったのであるが、子供たちの回答には「死」はなかった。
 
『「かわせみ」というのは、弱肉強食の世界の中で、食べられたら「こわいところ」という未知の世界に連れて行かれる恐怖を表しているんだね。』などと、やや未消化なまとめをしてしまった。
 
ただこれで物語には「裏側の意味」があるという大きな壁を突破できたと思う。
 
ここから一気にねらうレベルまで到達させたい!
 
『では、この「五月」を通して、賢治が伝えたかったことはどんなことでしょう。』
 
この問いに答えるための思考の誘導をした。
二つの話をした。
 
この物語は「かに」じゃなくて「人間」でも描けるのです。日光の降り注ぐ公園で、2人の兄弟が、大人がライオンに食べられてしまう現場を見たというのでも、賢治の言いたいことは伝わるかもしれないのです。それじゃあ生々しすぎるから「かに」で描いたのかもしれません。
でも、賢治は人間が食べられる物語も書いているんですよ。それが「注文の多い料理店」です。
賢治が「かに」や「かわせみ」を通して言いたかったことはどんなことなんでしょうか?
 
もう一つ。みなさんに聞きたいことがあります。
賢治はこの「五月」の世界を「いい世界」と捉えているのでしょうか?それとも「よくない世界」と捉えているのでしょうか?または「どちらでもない」「仕方がない」と捉えているのでしょうか?
「いい世界と捉えている」と思う人(0人)
「よくない世界と捉えている」と思う人(少数)
「どちらでもない・仕方がないと捉えている」と思う人(多数)
実は、「よだかの星」という物語の中で、主人公のよだかが、弟のかわせみに別れのあいさつをするときに、かわせみに伝えた言葉があります。(中略)このことから賢治は「五月」の世界を◯◯◯◯と考えていると予想できます。全ては示しませんのでご自分で解釈してください。
 
以上の話をして後は子供たちが自分の中で答えを導き出すのを待った。
 
一人、また一人、考えをノートに綴り始めた。
 
この日、子供たちがノートに書いたことは、子供たち自身が予想もしなかった到達点であったと思う。
 
「動物もがんばって生きているから、むやみにころしてはいけない。」
 
「動物はいつ殺されるか分からない恐怖の中で生きているということ。」
 
「動物も植物も命がつながっているということ。」
 
「人間も動物も生き物を食べて生きているので、簡単に命を取らずに、命を大切にして感謝して一生懸命生きろということ。」
 
「なるべく『死』という字を使わずに別の言葉で『死』を伝えたかった。
 
「生き物が死ぬのはいやだ。多くの災害でたくさんの命がうばわれたことを伝えたい。賢治が農業の道に進んだのも、この影響だと思う。」
 
子供たちが初めて物語の裏側に足を踏み入れた瞬間であると思う。
 
中には深読みしすぎと思えるものもあるが、その振り幅はこれからの学習で少しずつ修正されていくのではないかと予想している。
 
今日の学習は全員がAでもよいと思える。