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一貫性をもつ②(シンプル授業づくり)

 シンプル授業を目指す中で、陥りやすいのが、「ねらいのぶれ」です。

 ねらいがぶれることで、一貫性が保てなくなります。

 なぜ、ねらいがぶれてしまうのかと言うと、ねらいが絞りきれないことに原因がある場合が多いです。

 

 例えば、次のようなねらいを設定してしまうと、授業の軸はぶれます。

「繰り上がりのある足し算の筆算の計算方法を考え、繰り上がりのある足し算ができる。」

  このねらいは、「繰り上がりのある足し算の筆算の計算方法を考える」(思考・判断)、「繰り上がりのある足し算ができる。」(技能)の「2重のねらい」になってしまっています。

 この2つを1時間の授業の中で、指導し、評価するのは大変です。

 まず、子どもたちは「繰り上がりのある足し算の筆算の計算方法」を考えます。方法を考えるための問題は、27+15だとします。一の位の足し算が、今までは3+4=7のようだったのが、7+5=12になります。12の「2」はどこに書くか。「1(10)」をどうするか。上手に説明できる子もいるでしょう。どうしていいのか全く分からない子もいるかもしれません。その後、子どもたちの意見を集約し、教師が理想的な筆算の方法を提示したとします。そのやり方で、先の27+15はできるようになったとします。しかし、子どもたちは別の38+26もできるようにならなければいけません。なぜならば「技能」もねらいに入っているからです。これも、できる子もいれば、なかなかうまく正解に導けない子もいるでしょう。

 「思考・判断」と「技能」の2つの指導をし、2つの評価をし、それぞれにできない子を支援・再指導する。1時間の中でこれだけのことをするのは大変です。

 結果として、「どちらも中途半端な指導しかできない。」、「どちらも中途半端な評価しかできない。」というような事態が生まれてきます。もっと言えば、「どちらかの評価はしない。」とか「どちらも評価はしない」という状況も生まれがちです。

 これは一貫性が崩れてしまった状況です。

 最悪な場合は。「できない子をそのままにしておく。」という事態も生まれてしまうかもしれません。なにしろ、教室には大きく4種類の子がいるのです。

 (1)「思考・判断」はA・Bで「技能」もA・B

 (2)「思考・判断」はA・Bで「技能」はC

 (3)「思考・判断」はCで「技能」はA・B

 (4)「思考・判断」はCで「技能」もC

 この状況で全てのCの子に対応するのは神業と言えます。

 しかしながら、真面目な教師には、つい欲張ってしまう人が多いのです。「よい授業をしなきゃ」とか「遅れないように進まなきゃ」という心理が、授業を複雑にしてしまいます。結果として、よい授業もできないし、進度もはかどらないのです。

 一貫性をもつためには、ねらいを絞る。

 上の例で言えば、思考・判断の「繰り上がりのある足し算の筆算の計算方法を考える」に絞るのであれば、この時間は、技能面で十分でなくても、次の時間にまた習熟を図ればよいです。

 また、技能の「繰り上がりのある足し算ができる。」に絞るのであれば、計算方法は考えさせずに、すぐに計算方法を教え、「初めに一の位を計算します。5+7=12。一の位に2を書いて、十の位に1繰り上げる。」という手順をしっかりと覚えさせます。(私ならこの授業であれば後者を選択すると思います。特に配時が1時間しかない場合はそうします。)

 ねらいを1点に絞り、小さなステップを上がり、評価をして押さえる。

 一貫性のある授業で力を確実に伸ばすのです。