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シンプル授業の作り方《初級編》(3)作文

 ここで扱う作文は、国語の作文単元のものではなく、行事の後に書かせる生活作文や、お礼の手紙などの日常的なものです。作文の指導も、「ねらい」「学習課題」「学習活動」「評価」に一貫性をもたせて組み立てることでシンプルに教えやすくなります。

 

 まず、ねらいを確かめましょう。学習指導要領の「書くこと」のねらいは5〜6ありますが、ここではキーワードで示します。低学年は「順序」、中学年は「段落」「中心」、高学年は「構成の効果」です。

 

 では、ねらいを念頭に学習課題を考えてみましょう。

 まず、低学年です。低学年で意識したいことは「順序」です。

遠足でしたことを順序よく書こう。

運動会で心に残ったことを順序よく書こう。

 というような学習課題が考えられます。遠足の作文は、「初めに、博物館に行きました。博物館では・・・・・。次に、運動公園に行きました。運動公園では・・・」というように、時間に沿った順序で書かせる課題です。運動会の作文は、「運動会で心に残ったことは3つあります。一つ目は・・・」というように、印象に残った順序で書かせる課題です。

 中学年で意識したいことはまず、「段落」です。

調理員さんへのお礼の手紙を「はじめ」「中」「終わり」で書こう。

 「はじめ」には、まずお礼の文が入ります。「中」は、感謝している内容を書きます。「終わり」は、あいさつです。

 「中心」を意識させたい時は、次のような学習課題が考えられます。

学習発表会で心に残ったことが伝わるように詳しく書こう。

 書き出しを「僕が学習発表会で一番心に残ったことは〜です。」とすれば、おのずと中心が明確になる作文になります。

 高学年の「構成の効果」を意識させる課題には次のようなものがあります。

「(会話文)」から始まる、運動会の作文を書こう。

クライマックスを意識して宿泊学習の作文を書こう。

 いずれにせよ、運動会や宿泊学習の全体について書くのではなく、中心を決めて書き進めることになります。

 

 次に「学習活動」について考えます。生活作文やお礼の手紙などを45分という限られた時間で、全員に書き上げさせる最良の方法は例示に尽きます。極端に言えば、教師が書いてみた全文を示してもよいくらいです。本当に作文が苦手な子は、例文を半分くらい写してしまってもよいくらいの気持ちで取り組むとよいと思います。「先生の文は60点くらいだから、みんなはもっと上手に書いてね」と言えば、力のある子はどんどん自分なりの工夫を入れます。中位の子らもストレスなく書き進められますし、下位の子も真似をすれば完成されられる安心感の中で書けます。中には面倒がって相手に伝わるだけの十分な内容を書かない子もいますから、子どもたちの力を引き出すために「原稿用紙1枚以上」などの文字制限や、「気持ちを入れる」「会話文を入れる」「教えていただいた内容を入れる」「同じ文を繰り返さない」など表現上の約束を事前にしておくことが大切です。これは評価にもつながるのですが、どうしても書き直しをさせたい時は、この約束に合っていないところだけを直させます。書き直しは作文嫌いを生み出すので、できるだけさせない方がよいのです。

 

 最後は評価です。できた作文に朱書きを入れて返せばいいのですが、それはなかなかの負担です。私の場合は、書き上がった作文にコメントをして評価をすることが多いです。その場合のコメントは、もちろん学習課題に対してどうであったかを評価します。

学習課題遠足でしたことを順序よく書こう。

評価「順序よく書けていて、○○君がしたことが分かりやすかったよ。」

学習課題学習発表会で心に残ったことが伝わるように詳しく書こう。

評価「〇〇さんの心の中がよくわかって楽しく読めたよ。」

学習課題クライマックスを意識して宿泊学習の作文を書こう。

評価「クライマックスが詳しく書けていて読んでいて引き込まれたよ。」

 もし、朱書きをする場合も、このように学習課題に正対したコメントを書きます。生活作文へのコメントは、「お母さんのお弁当おいしかったね。」などと教師が読んだ感想を書く方法もありますが、これは結構な負担で、朱書きになかなか手をつけられずに、教卓の隅に積んだままになってしまうこともよくあります。評価はできるだけ早く返すのがいいのです。