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「評価」を考える(シンプル授業づくり⑤)

《授業の基本構成》 

  ねらいの設定→学習課題→学習活動→評価

 

 「学習活動」の次は「評価」になります。

 「学習課題」を抜かしていますが、これは授業の要ですので、教材研究の段階では、最後に決めても遅くはありません。

 

 1年生の鉄棒、「足抜き回り」で評価を考えてみましょう。

 評価基準を明らかにします。

 上手な足抜き回りは、足が鉄棒に触れません。蹴りの力を生かして、スムーズに回ります。また、足抜き回りは後方に回るものと、前方に回るものがあります。両方がスムーズに連続でできればAとします。

 前・後ろ、どちらかにスムーズさが欠ける場合はB。

 また、足抜き回りが苦手な子は鉄棒に両手でぶら下がって、片足を鉄棒に引っ掛けてお尻を持ち上げ回ります。回るための蹴りの感覚は身につけていませんが、逆さになる感覚は身に付いていますので、これはギリギリB(B−)とします。

 補助がないとできない場合は残念ながらCです。

 目標は、全員がBをクリアすることです。

 

 さて、そもそもなぜ評価を行うのでしょう。

 

 評価にはいろいろな役割があります。意識して行うと、効果的な指導に結びつけることができます。ここでは4つの役割を示します。

(1)成績をつけるため

 私たちは一人一人の評価を通知表で保護者に知らせたり、指導要録に記録したりしなければいけません。単元最後のテストがこの役割を担うことが多いですが、普段の授業でも子どもたちのよさや課題を記録していくことで、子どもたちの達成度をより客観的に捉えることができます。また、これらの記録が子どもたち一人一人を理解するための資料となる場合もあります。

(2)指導の効果を確かめるため(全体)

 評価は、学習課題や学習活動が子どもの力を確実に伸ばしていたかを確かめるための手だてとなります。その結果を基に、場合によっては指導をやりなおさなければいけないこともあるでしょう。よくなかった原因を突き止め、その後の指導に生かすことも大切です。

(3)指導の効果を確かめるため(個)

 教師の指導が個々の力をどれくらい伸ばしたのか確かめます。全員がAになるような指導はなかなかできませんが、目標はそこにあります。重要なのはCの子を把握することです。これらの子をそのままにしておく訳にはいきません。休み時間や放課後に個別指導をしたり、家庭に協力を求めたりしてできるまで指導を重ねることが考えられます。全てのCをBにするのは、現実には難しいと思いますが、可能な限りCの状態を抜け出せるように指導を重ねたいです。

(4)子どもたちに自信や達成感をもたせるため

 授業の中盤から後半にかけて、評価を行い、子どもたちに自信や達成感をもたせることができます。場合によっては、もっとがんばらなければいけないところを意識させなければいけない場合もあります。その場合も、「今はここまではできている」とポジティブに捉えさせたいです。

 シンプル授業の基本構成である「ねらいの設定→学習課題→学習活動→評価」の中では、この「自信や達成感をもたせるための評価」を重視しています。そのための評価の方法については別に詳しく述べたいと思います。

 

 さて、1年生鉄棒「足抜き回り」に話を戻しましょう。

 練習の中盤から後半に一人一人を評価する時間を取ります。

 抜き打ちで評価をするのではなく、授業の初めに「こんなふうにピョンピョン、前、後ろに何回も回れたらすごいよ。」、「苦手な人は、両手でぶら下がって片足を引っかけて回ってね。」などと、目指す姿を示しておきます。

 

 評価する時は、一度、全員を集めて、一人ずつ演技させてもよいですが、見られるのが恥ずかしい子もいますので、私は練習をさせながら一人一人に声をかけることが多いです。 

 前後にスムーズに連続して回れる子には「すばらしい!」「先生より上手だなあ!」などと評価します。

 足をかけずに回れた子には「上手!足をつかないで回れたね!」とよさを認め、「連続でできるともっといいよ」さらなる目標を示すこともあります。

 足をかけて何とか回れた子には「合格!」「やった!できるようになったね!」と成長を評価します。

 残念ながら教師の補助が必要な子には「前より上手になったよ。」、「先生の手が軽くなっているよ。」などと成長を見つけて認めます。休み時間や放課後に時間をとってあげられればよいのですが、多忙な現場ではそれがままならないのが現実です。本人ができるようになるためのレディネスが十分でない場合もあります。「2年生の鉄棒の勉強でまた練習しようね。」「それまでに時々、鉄棒で遊んでね。」と次につながるように言葉がけをしたいです。

 以上の評価は、(4)の「子どもたちに自信や達成感をもたせるための評価」です。これをしっかりと行えば、(1)の「成績をつけるための評価」も、(2)(3)の「指導の効果を確かめるための評価」も自動的にできています。

 シンプル授業の仕上げは「評価」です。それは、子どもたちに自信や達成感をもたせ、場合によっては目標や課題に気づかせるための評価です。評価」は場合によっては、「学習活動」以上に子どもを伸ばす力をもっています。生にほめられたことを大人になっても覚えている人がいるのです。毎時間、全員をほめるなんてとてもできませんが、「今日、できるようになった人は手を挙げましょう」と手を挙げさせるだけでも評価です。その積み重ねが大切なのです。