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1年生国語「おむすびころりん」教材研究

本日「おむすびころりん」の研究授業を参観した。
1年生なのに学習に向かう姿勢がすばらしく、とてもよい刺激を受けた。
 
さて、本日の学習課題は次の通りである。
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あなにおちたおじいさんのきもちをかんがえて、おんどくしよう。

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今日はこの課題について考えてみたい。
少し国語に詳しい人ならすぐに気付くだろう。
「気持ちを考える」は低学年の目標ではない。
これについては、指導主事も最後に苦言を呈した。
 
なぜ、物語文の国語の学習課題は「気持ち」に傾いてしまうのか?
また、なぜ1年生に「気持ち」を問うてはいけないのか?
私の考えを示したい。
 
まず、なぜ、物語文の国語の学習課題は「気持ち」に傾いてしまうのか?
これは、学習課題・発問の研究不足があるのではないかと思う。
低学年の物語文の目標は「場面の様子について,登場人物の行動を中心に想像を広げながら読むこと」であるが、場面の様子を問うための学習課題・発問をみんなあまり知らないのではないかと思う。
私は今日、授業を見ながら、おじいさんが穴に落ちる場面の発問を考えてみた。(どれも補助発問レベルであるが、教材分析の意味も含めて示す。)
 
1 おじいさんは何をしていて落ちましたか。
2 おじいさんは自分から穴に落ちましたか。落ちるつもりはないのに落ちましたか。
3 穴はせまいですか。広いですか。
4 穴は長いですか。短いですか。
5 落ちるとき、どこか痛くないですか。
6 穴の向こうにねずみがいることをおじいさんは知っていますか。
7 落ちているとき、おじいさんはどんな顔ですか。
8 おじいさんはどこに着きましたか。
9 ねずみのおうちについておじいさんの顔はどうなりましたか。
10 挿絵のおじいさん※の手は何をしていますか。※手拍子をしているおじいさんの挿絵
 
どれも「気持ち」は聞いていないが(近いものはあるが)、子どもたちの学びを引き出す力はあると思う。中には気持ちを聞くよりもおじいさんの気持ちにせまれるものもあると思う。
「穴はせまいですか。広いですか。」
ねずみの掘った穴だ。せまいだろう。せまい穴を落ちていくのはどんな感じだろう。
「落ちるとき、どこか痛くないですか。」
痛くないわけはない。穴に落ちたのだ。どこかぶつけるだろう。1年生でもいろいろ想像できる。
私はもっと「場面の様子」「登場人物の行動」「想像を広げながら読む」に特化した発問・学習課題の研究が必要だと思う。
そうでないと、いつまで経っても「気持ち」の授業からの脱却は難しいのではないだろうか。
 
次に、なぜ1年生に「気持ち」を問うてはいけないのか?について示したい。
「学習指導要領に書かれているから」と言ってしまえばそれまでだが、なぜ学習指導要領は中学年から「気持ち」なのか。(しかも、平成10年指導要領では「気持ち」は高学年からだったのである。)
 
学習指導要領では、1年生に平仮名を教えるように示している。これは1年生は「字が読めない。書けない。」状態で入ってくることを前提としているからである。
そのような子どもたちには、「まず書いてあることを正しく読むこと」「書いてあることの意味を理解すること」をしっかり指導しなければいけないのである。
 
先の発問例1〜10の中で私が一番気になるのは6の「穴の向こうにねずみがいることをおじいさんは知っていますか」である。
低学年の子はけっこう、そういうところを勘違いしているのである。
低学年の目標によく「順序」という言葉が出る。読んでいる子どもたちはストーリーを知っているので穴の先にねずみがいることを知っているが、自分とおじいさんと重ねてしまう。そうやって話の順序を混同してしまうのだ。
 
授業では「穴に落ちたおじいさんの気持ち」と聞かれて、多くの子が「びっくりした」と答えた。本当におじいさんの気持ちになり切った「びっくりした」もあれば、「落ちる=びっくり」のステレオタイプで答えているものもあるだろう。中には、ねずみたちのところへワクワクしながら落ちていると思っている子もいるかもしれない。
 
国語も算数のように段階を追った指導が必要なのである。
「気持ち」は、まず内容が正しく読めるようになってからでよい。その頃には「気持ち」を表現する言葉も増えていることだろう。
 
今日の授業は、1年生には「背伸び」した内容であったと思うが、子どもたちは実に楽しそうに、実に上手に発表や音読をして、1年生の目標を十分にクリアしていた。子どもたちの純粋な笑顔にこちらも笑顔になった。見事な授業者の力量だったと思う。私にはとてもマネできないと思った。
 
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