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6年体育「ソフトボール」教材研究

1学期の体育の教材に「ソフトボール」というのがある。

子どもたちは2年生で「キックベースボール」を、4年生では「ティーボール」を経験している。はずなのであるが聞くと「ティーボール」は、ちょっとかじったくらいであるらしい(していないという子もいた)。

ソフトボールというのは下手投げのベースボール型競技であるが、今回の「ソフトボール」はグローブを使わない「ソフトなボール」という意味の「ソフトボール」である。

さて、ベースボール型ゲームを子どもに指導する時、ネックになるのが二つある。

(1)進塁ルールの複雑さ

(2)打撃技術の難しさ

逆に言えば、この(1)(2)を解消すれば、誰でも楽しめるゲームになるのである。

複雑なゲームをシンプルにすれば、自分たちで練習するポイントも明確になるし、作戦も考えやすくなる。

つまり、子どもたちの力を引き出しやすく、伸ばしやすくなるのである。

ところで、「ゲームをシンプルにする」と言っても、要の部分を取り除いてしまっては学習にならない。

大切なのは、この単元のねらいが何であるのか確認することである。拙著『学習課題の見える化で学力アップ! 驚異の板書ツール「課題ボード」入門 』でも触れたが、体育の場合は必要以上に難しいことをしないためにも(例えば、低学年に「全員、逆上がりができるようになろう」と言うような)、ねらいの明確化が大切である。体育の副読本を読んでも、そのあたりのことが非常に見えにくいからなおさらである。

学習指導要領には次のようにある。

ウ ベースボール型では,簡易化されたゲームで,ボールを打ち返す攻撃や隊形をとった守備によって,攻防をすること。

一気に要所が明確になった。

まず、ベースボールの複雑なルールは「簡略化」すればよいのである。

そして、技術的なポイントは「打ち返す」である。(ティーボールでは「打つ」なので、打ち返すにならない。)もう一つは隊形をとった守備である。

学習指導要領にはさらに次のようにある。

(3)ルールを工夫したり,自分のチームの特徴に応じた作戦を立てたりすることができるようにする。

 これが、「思考・判断」の力を伸ばし、評価するための学習内容になる。「ルールの工夫」「作戦」だけでなく、自分たちのチームに合った「練習方法」を考えるというのも含めて差し支えないだろう。

 

実は、これらの教材研究をしないまま、用具の準備もしないまま、「ソフトボール」の最初の授業を行った。しかも疲れ果てた金曜6限にである。(体育をつぶして別の学習をする予定だったのに、その学習ができなくなって体育をするしかなくなった。)

しかたなく体育の副読本を配り、子どもたちに「ソフトボール」のルールを説明した。指導=教材研究の同時進行。さすが課題ボーダー1号である。

(1)三角ベースとする。(1塁、2塁、ホームの直角三角形)※4年生の時にティーボールをほとんどやっていないことに配慮した。

(2)打者が1、2塁間に打ったら走る。1塁のサークル(円)までに打者が早いか、ボールが早いか競う。サークル内でボールをキャッチするのが早ければアウト、打者が早く到着すればセーフで塁に残る。打者は1塁→2塁→ホームとアウトにならない限り進塁が可能である。進塁途中にボールでタッチされてもアウト(投げて当てるのは不可)。ホームまでたどり着けば得点になる。

(3)次の打者が打ったら、塁上の走者は進塁する。進塁先のサークルで、走者よりも早くボールがキャッチされたらアウト。ただし、打ち上げた打球(フライ)をノーバウンドで取られたら打者はアウトで、走者は進塁できない。

(4)チームの全打者が打ったら攻守を交替する。(3アウトの交替ではない)

そして今回は打つのではなく「スロー(投げる)ベースボール」にした。ルールの確認のためのゲームなので、ここは簡略化した。

このルールでやってみて、子どもたちの状況をつかむのが私の当面のねらいであるが、本当のねらいは「教材研究のしていないこの1時間をどうやり過ごすか」にあったと思う。

苦しまぎれに次のように課題を提示した。

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ソフトボールのルールを確かめよう。

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最初は乗り気ではなかった子もいたが、始まると楽しそうにゲームをやっていた。

やってみて明らかになったことがいくつもあった。

・守備側が1、2塁のサークル内に投げたボールが後ろにそれた時、野球のルールを知らない子は、進塁してよいか分からない。また、ずっと後ろにボールがそれて行ってしまった場合、ピッチャーゴロがホームランになりうる。

・走者になった時、フライでも走ってしまいアウトになる子がいる。

やはり走塁ルールが複雑である。特にフライの時の進塁はプロでも難しい場合がある(広島、インフィールドフライでサヨナラ/プレー図解 - プロ野球 : 日刊スポーツ←ついこの前のニュース

こうして無事、教材研究をしていない金曜日の6時間目をやり過ごし、子どもたちの実態を捉えることまでできたという逆転スクイズバントで逃げ切った課題ボーダー1号

そして次の週の月曜日に、我ながら「これで完璧」と思えるルールを子どもたちに提示することができた。それは次回に。

一度の教材研究で一気に何時間分の学習課題を設定する方法も示しています(P44)。↓↓↓