授業をシンプルに楽しく。 教育をシンプルに楽しく。

脱「話合い」でピンチ脱出!

貴重な空き時間に補欠で授業に出ることになった(業界用語ですが意味通じてますか?)

 
しかも「プリント→終わった人は読書」という自習型学習ではなく、私に3年生の社会の授業をせよというではないか!学習内容は非情にも「家の近くのお気に入りの場所を発表する。」である。(ガックリ!業界のあなたなら分かってもらえるでしょ?この落胆!)
 
私は何としてもこの時間に国語の「時計の時間と心の時間」の教材研究と準備をしないといけないのである!
 
このピンチを乗り切るために、私は課題ボーダーへの変身を決意した!
変身っ!!
ピロピロピロ、チーン
 
私は課題ボーダー。授業をシンプルに楽しくする男。
 
今回、私に与えられたミッションは「家の近くのお気に入りの場所を発表する」である。
ねぇ君、ノート見せて。ありがと。
ふむ。すでにお気に入りの場所は書いてあるな。ちゃんと理由も書いてある。
これを発表させろと言うのか。。。
学習課題をそのまま「家の近くのお気に入りの場所を発表しよう」にしたらまちがいなく沈没である。友達の発表の中には行ったことも見たこともないような場所もたくさんあるだろう。子どもは30人近く。想像力を働かせるにも限界がある!
子どもたちにとっては退屈、私にとっては憂鬱な1時間になること間違いなしである。
学習課題を何とかせねば!
学習課題設定のためには「ねらいの明確化」は外せない。しかし、担任から「ねらい」の伝達はない。学習活動から逆算してこちらで設定しよう…。
「自分たちの地域(校区)に興味をもち、地域を探検してみたいという気持ちを高める」(関心・意欲・態度)
とっさのことなのでかなりテキトーだが、この後、おそらく地区の調査活動をすることを考えるとまずは自分の住む地域に興味をもち「探検してみたい」という気持ちをもたせることが大切であろう。
 
ねらいは設定できた!
よしっCPUを最大限に発揮して学習課題を考えるのだ
ウォーーーーーッ!
チーン
できたぞ!起死回生の一手が!
今日の学習課題はこれだ!!
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お気に入りの場所を友達と教え合おう。
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『課題を読みます。さん、はい』
『今日はノートに書いてある「お気に入りの場所」を友達と教え合いましょう。席を立って教え合う友達を見つけます。友達に自分のお気に入りの場所を教えたら、友達のお気に入りの場所も聞きましょう。』
『教え合いが終わったら、相手のノートにサインをしてあげましょう。サインは自分の名前を1マスにこんな風に書きます。たくさんのお友達と教え合って、サインをもらえるといいね。』
『教え合いが終わったら、最後にノートに「行ってみたい場所」を書いてもらいますから、教えてもらった場所を覚えていてくださいね。』
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ふうっ…これで大丈夫だろう。
変身解除!
学習課題をノートに書く時間も合わせて10分で決着をつけた!
その後、子どもたちは、実に楽しそうに、30分近く飽きることなく、次々とペアを作り、教え合う学習活動を続けた。
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途中、サインが何個になったか挙手で答えさせたり、「行きたい場所は見つかったかな?」とか「あと15分です」などと声がけしたりした。
子どもたちは「10人とやったぞ」「おれ15人」と数自慢になっている部分もあったかもしれないが、とにかく意欲的に活動している。
 
授業後半には実に面白い姿も見られた。元気のよさそうな男の子が「男全員とやってしまった」と困った声でつぶやいている。そして教室を見回し、いくつもの男女カップル(笑)ができているのを見て、近くにいた女の子に声をかけ、教え合いを始めた。
この学習課題は男女の仲をよくするといる学級経営にかかわる部分でも威力を発揮したのである。
 
最後の5分に「行きたい場所」をノートに書かせた。全員が書けた。全員が今日の学習で合格ラインに達したたいうことである。
参考までに聞いてみた。
『今日のお勉強、楽しかった人?』
「はあい」と全員の手が上がった。
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座席の一番前の男の子のノート。
内容はまだ生活科の匂いがするが、彼がしっかりと本時のめあてを達成したことが伺える。
 
授業の終わりの挨拶と同時にチャイムが鳴り、私は教室を後にした。もちろん、自分の教材研究と授業の準備はきちんと済まさせてもらってである。
 
さて、今回の起死回生の逆転劇の裏側には「脱・話合い」の考え方がある。ここで言う「話合い」とは、教師に指名された子どもが意見を言い、その発表を聞き合う形の授業形態のことである。
6年国語「カレーライス」まとめ でも述べたが、この授業形態には教育的な効果があまり期待できないと私は考えている。
もっと言えば、楽しくないし、ストレスが大きい。発表するのが苦手な子どもにも、発表を聞くのが苦手な子どもにも辛い。子どもだけでなく教師も辛い。「うちのクラスの子どもたち、全然手を上げなくて」なんてことが常に重荷になってしまっているのである。
でもそれ以外の方法を知らないし、考えようともしない。
 
今回、課題ボーダーはミッションコンプリートのためにまず何をしたか?
それは「ねらいの明確化」である。
そして、そのねらいを達成させるために自由な発想で学習活動を選んだ
そして、シンプルで楽しい学習課題が生まれた。
本来「人に教える」とはシンプルな営みである。複雑に分かりにくくして自分を縛っているのは教師自身である。
と改めて思うのである。
 
シンプルで楽しい学習課題の作り方はこちら↓↓↓