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シンプル授業の作り方《初級編》(2)音読

 初級編(2)は「音読の指導」です。ここでは中学年を想定してみましょう。

 

 まずはねらいを考えます。そもそも音読の目標とはなんでしょう。

 学習指導要領によれば、中学年は「内容の中心や場面の様子がよく分かるように音読すること」。ちなみに、低学年は「語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること。」、高学年は「自分の思いや考えが伝わるように音読や朗読をすること。」となっています。

 しかし、1時間1時間の学習の中では、「まず、スラスラ読めるようにさせたい」、「内容を把握させるために繰り返し音読させたい」というように、読みの下地を作るための音読が大切になります。上記の低・中・高のねらいは、年間に数回の単元で重点的に行うことにすればよいです。

 まず、単元の導入では「読み間違えることなく最後まで読めるようになる」というねらいが考えられます。また、単元の序盤では「繰り返し音読をし、だいたいの内容を捉える」というねらいが考えられます。中盤以降は、音読は行っても、1時間1時間の学習の中心は、説明文であれば「段落相互の関係や事実と意見の関係」、物語文であれば「登場人物の性格や気持ちの変化」に移るため音読自身が学習のねらいになることはないと思います。また、終盤では学習したことを意識しながら、また音読に戻るという展開も考えられます。

 

 次に学習課題を考えます。導入時に、「まず正しく読めるようにさせたい」という時は、次のような課題が考えられます。

「ごんぎつね」を正しく読めるようになろう。

「ごんぎつね」を音読できるようになろう。

漢字の読み方を確かめて「ごんぎつね」を読めるようになろう。

 次の段階としてスムーズな読みを目指す時には、次のような課題が考えられます。

「ごんぎつね」をすらすらと音読できるようになろう。

友達と声を揃えて「ごんぎつね」を音読できるようになろう。

 また、単元のねらいに沿った学習課題も考えられます。

様子を思い浮かべながら音読しよう。

大事なところを考えながら音読しよう。

「○○(登場人物)」になりきって音読しよう。

登場人物の気持ちになって音読しよう。

聞いている人に様子が伝わるように音読しよう。

大事なところを強調しながら音読しよう。

 その他にも、目標をもたせて取り組む学習課題も考えられます。

「ごんぎつね」音読100回に挑戦しよう。

音読発表会に向けて練習しよう。

学習参観で家の人に上手な音読を聞かせられるように練習しよう。

 どんな力をつけたいか明確にして学習課題を設定します。

 

 次に学習活動を考えます。音読を繰り返す学習は学年が上がるにつれ子どもたちは嫌がるようになります。「褒める」「成長を認める」「音読の意味・効果を話す」などの手だてで、意欲を高めていく必要も生まれてくるかもしれません。例えば、私は2年生の「スーホの白い馬」で、地域のお年寄りに音読発表会をする学習をしたことがあります。単元を通して、感想を書く以外は音読しかしませんでした。市販テストの得点は、90点が1名で他は全員100点でした。「読書百遍」とは言いますが、音読というのはこれくらいの力があるのです。音読をしっかりと行えば、「段落相互の関係」や「登場人物の気持ち」に至るにも逆に近道なのです。このような話を分かりやすく子どもたちにして音読の効果を伝えると、ただ読まされているのではないという気持ちになれるでしょう。

 また、繰り返し読ませるには、音読のバリエーションもあればあるほどよいです。教師の範読を聞きながらの「黙読」、教師が1文や1節を読んで子どもがまねして読む「追いかけ読み」、教師と子どもが一緒に読む「共読み」、全員で声をそろえて読む「一斉読み」、一文一文をリレーで読む「一文読み」などが基本です。ペアやグループで声を合わせて読ませる方法もあります。自分のペースで一人ずつ読ませる場合は、読んだ数だけ「正」を書くとか、「立って1回、座って1回、窓際に行って1回」など、飽きさせない手だてが有効です。

 ねらい・学習課題、子どもたちの状況に合わせて、読ませ方を工夫しながら活動を組みます。

 

 最後は「評価」です。例えば、スムーズに読めるかという評価は、リレーの「一文読み」で捉えられます。個々に読む文は違いますが、短い文にもその子の習熟度は現れます。ペアで片方が聞き役になって確かめることもできます。1分間、自分で読ませてミスを数えさせる方法もあります。また「一斉読み」の間に一人一人の横に立ち、声を聞きながら確かめる方法もあります。「友達と声を揃えて「ごんぎつね」を音読できるようになろう。」という課題の時は、一斉音読の時の口元を見れば確かめられます。教師が判断した結果は子どもたちに伝え、自信や達成感につながるようにします。